閉経後は特に気を付けて!腎臓の機能障害の原因と対策は?

血液を濾過して老廃物や有害物質を排出し、体内のバランスを維持する腎臓。普段の生活の中で、胃や大腸と違い、腎臓を意識することはないかもしれませんが、生命を維持する上で重要な働きをたくさん担っている臓器です。
腎臓の機能に障害が起きると、最終的には人工透析が必要となり、生活の質が著しく落ちるほか、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクも高まります。

注意したいのは、明確な原因となる疾患がなくても、腎臓の機能は年齢とともに少しずつ衰えていくということ。特に女性は、更年期の女性ホルモン減少がトリガーとなって腎機能障害が進行する場合もありますので、特に閉経前後は自覚を持って、体調の変化に気を配ることが大切です。

ここでは、腎臓の機能障害の原因と早期発見のコツ、進行させないための対策について、東京ミッドタウンクリニックの古川真依子先生に伺いました。

腎臓機能の衰えが体に与える影響とは?

――日常生活で腎臓を意識することはあまりない気がします。まずは、腎臓の基本的な働きについて教えてください。

腎臓のおもな働きは、5つあります。

・腎動脈から入ってくる血液を濾過して、きれいな血液を腎静脈から体内に送り、老廃物を尿として排出する
・体内の水分量や電解質のバランスを調節する
・カルシウムの吸収を促して骨を丈夫にするホルモン「活性型ビタミンD」を作る
・血圧を調整するホルモン「レニン」を作る
・血液を生成するホルモン「エリスロポエチン」を作る

腎臓の働きを知ると、かなり重要な働きをしていることがわかるのではないでしょうか。

――本当ですね...。腎臓に機能障害が起きると、体にさまざまな影響がありそうです。

腎臓で血液が濾過されなければ、老廃物が体に溜まり続けてしまいますから、免疫力が低下して風邪などを引きやすくなることもあります。また、活性型ビタミンDの欠乏によって骨がもろくなり、骨粗鬆症が起こる可能性も高まりますし、レニンが作られないと血圧を調節する能力が低下して、血圧の異常(高血圧・低血圧)の原因にも。さらに、十分な量のエリスロポエチンが作られなければ、赤血球が不足して貧血にもなりやすいでしょう。

水分量のバランスが崩れると、尿道に細菌が入り込みやすくなるので、膀胱炎や腎盂腎炎(じんうじんえん)といった尿路感染症を引き起こすこともあります。血液中に尿酸の塊ができて足指の付け根などに激しい痛みを感じる痛風も、腎臓の機能低下にまつわる疾患のひとつですね。


■腎臓機能の重症度とその症状

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日本腎臓学会編「CKD診療ガイド」(2012)より引用、改変

手足のむくみや尿の変化は、腎臓の機能低下のサイン?

――腎臓の機能障害は、なぜ起こるのでしょう。

腎臓は、年齢とともに少しずつ衰えていく臓器。衰える最大の原因は、血管の壁が厚く、硬くなって、しなやかさが失われる動脈硬化です。動脈硬化は、老化によって誰でも、体中どこの血管にも起こりうるもので、もちろん腎臓の血管も例外ではありません。

動脈硬化が起きて血管が硬くなったり、狭窄を起こせば腎臓の排出と吸収のバランスが崩れたりします

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糖尿病をはじめとする生活習慣病は、動脈硬化を早める大きな要因ですから、生活習慣病があると腎機能の低下の原因となります。

塩辛い物や味付けの濃い物を好む食習慣も、通常のコントロール機能を超えて腎臓に激しい働きを強いることになるので、障害を引き起こす遠因になるでしょう。お酒の飲みすぎで肝臓に負担がかかるメカニズムと似ていますね。

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女性の場合、女性ホルモンの減少も因子のひとつ。女性ホルモンは、血管の柔軟性を保つ役割と、腎臓に集まった尿酸の排出を促進する役割を果たします。30~40代で尿酸値の上昇を指摘される女性が少ないものの、閉経に向かうにつれて増えていくのはそのためです。女性ホルモンが減りはじめる更年期から閉経後にかけては、腎臓の働きにも意識を向けましょう

一度低下した腎機能は回復させるのが難しいので、腎臓からのサインを見逃さず、早めに生活習慣を改善して機能維持を心掛けていただきたいです。

――腎臓からのサインには、どのようなものがありますか?

一番わかりやすいのは、手足のむくみです。腎臓の機能が落ちていれば、水分や塩分の排出がうまくいかなくなって体内に溜まるので、むくみが現れやすくなります。長時間のデスクワークや立ち仕事で血液の循環が悪くなったり、たくさんお酒を飲んだりしたときもむくんでしまうことがありますが、一晩寝たら治るような一過性のものであれば、特に心配する必要はないでしょう。

ただ、足のすねを指で押してみて、指の跡が1日中残る場合は、腎臓にかなり負担がかかっているかもしれません。

■むくみチェック

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このほか、血圧が高い、尿意が近い、1回に出る尿の量が少ないといったことも、腎臓の機能低下を知らせるサインです。体内の水分が不足して脱水気味になると、濃い色をした尿が出ることも多いでしょう。健康診断や人間ドックでは、尿潜血が出たら膀胱炎や腎盂腎炎を起こしている疑いがあるので、きちんと再検査をしてほしいですね。尿蛋白が+の場合も、早めの再検査をおすすめします

また、家族に人工透析を受けている人や、糖尿病の人がいる場合は、生活習慣が似ていることで発症リスクが高まるため、一度検査を受けておくと安心です。

年齢に応じたケアで、腎臓を正しくねぎらって

――腎臓の機能障害を防ぐ方法を教えてください。

腎臓の機能障害に至る人の共通項として、意外と多いのが水分不足による脱水症状。体重を維持するために水分を制限していたり、そもそも水を意識的に飲む習慣がなかったりすると、体内の水分量が足りなくなって腎臓に負荷がかかります。健康な成人は、1日に1.5Lの尿を排出するといわれていますから、その排出量を補うだけの水分をとりましょう

ほかの疾患にも共通することですが、肥満もリスク要因となります。女性ホルモンが減少して代謝が落ちると太りやすくなるので、バランスのとれた食事と適度な運動で肥満を予防してください。

あとは、食事内容を見直して、減塩を心掛けることも大切です。濃い味が好きな人は、いきなり塩分を減らすと物足りなく感じると思うので、少しずつ塩分を減らして薄味に慣れていきましょう。市販の塩分ケア商品を食べてみて、塩分の適量を味覚として覚えるのもいいと思います。

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――年齢に合わせて生活を見直し、無理せず腎臓をいたわっていくことが大切なのですね。

そうですね。お話ししたとおり、一度低下した腎機能を回復させるのは難しいですが、正しい生活習慣を身に付けて腎臓をいたわることで、現在の機能を維持することはできます。まずは、ここでお話した水分摂取や食事内容の見直しなど、生活習慣の改善から意識してみてください。

もし、もっと詳しく知りたい場合は、学会が一般の方にも公開している腎臓病予防のためのフォーラムや、大学病院などが行っている講演会に参加して、食事内容や生活習慣を学ぶのもおすすめです。

また、閉経前後からは特に、毎年の健診における尿検査や血液検査の数値の変化にも注目してください。正常値だから安心するのでではなく、前年、前々年とで数値がどう変わっているかを知る癖をつけることで、自分の体の変化を感じるようにしましょう。

正しい知識を持ち、自分の腎臓を信じて、適切なコントロールを続けてください。


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東京ミッドタウンクリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

古川先生

PROFILE

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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