40代以降の健康診断結果はどう見るべき?医師が教える重要項目

自身の健康状態を客観的にチェックして、疾患の早期発見・早期治療につなげるために、健康診断は毎年受けたいもの。大切なのは「健診を受けること」ではなく「健診結果を見て行動すること」ですが、実際には結果表をよく確認していなかったり、大切な項目を見落としていたりする人が少なくありません。

そこで、40〜50代の女性が健診結果の中で注視したほうがいい項目について、東京ミッドタウンクリニックの古川真依子先生に伺いました 。

健診の結果表は毎年保管し、経年変化をチェック

――健康診断の結果が出たら、その年の数値と判定をざっとチェックして終わりにしている人は多そうです。

「健診を受けるまでは憂鬱だったけど、どの項目も異常なしで良かった」と、ざっと見て終わりにしてしまう人は確かに多いですよね。確かに、その年は基準値内に収まっているかもしれませんが、昨年、一昨年と比べるとどうでしょう。昨年までの結果に比べて数値が上昇していたりしないでしょうか。

もし、数値に何らかの変化が見られるようなら、それは健康状態に変化が現れつつあるということ。疾患の兆候を早期につかむきっかけになりますから、毎年もらう結果表をきちんと保存しておいて、経年で管理するようにしましょう。

家族歴がある疾患については、より丁寧に数値の推移を見守ってください

――基準値内かどうかだけでなく、過去の自分と比べながら見ることが大切なのですね。

そうですね。異常値ではないから安心するのではなく、自分の過去の数値を見比べる習慣をつけていただきたいです。これまでと違うところを見つけることができれば、食生活や生活習慣など、できることから変えていけますよね。

「あれ?」と思った項目を起点に生活を見直し、次回も忘れずに変化を確認しましょう。

40〜50代の女性が必ず見るべき項目6つ

――40代から50代の女性が特に見るべき項目や、注意すべき項目はありますか?

では、必ず見ていただきたい項目をひとつずつご紹介しましょう。


診察所見

初めに、診察所見や判定が記載されている部分をチェックします。女性の場合、ここに例えば「甲状腺腫大の疑い」と記載されていたら、判定のレベルはどうあれ早く医療機関への早めの受診をおすすめします。


体重

体重は、経年の変化が現れやすい項目です。40代になると一般的に太りやすくなるものですが、特に生活習慣を変えていないのに急激に体重が増えた場合は、ホルモンの病気が隠れているかもしれません

一気に体重が減少した場合も、何らかの疾患が関係している可能性が高いので、軽視は禁物です。

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血圧

最高血圧の正常値は、一般的に120~129となりますが、結果表に記されているのはあくまでも計測した時点での血圧。一日の中でも上下しますから、ご自身の結果が129ギリギリだった場合は油断せず、推移を見守ってください

また、家族歴に高血圧がある場合は、早めに食事の減塩を開始することをおすすめします。年とともに衰えていく腎臓の働きも、高血圧が助長するといわれていますので、注視していきましょう。


白血球、赤血球、血小板

白血球や赤血球、血小板は、女性に多い貧血傾向をチェックできる項目です。貧血の原因として最も多いのは鉄分不足ですが、子宮筋腫や腫瘍によって過多月経や不正出血が起こり、大量の血液を消費していることも。

そのため、貧血を指摘されたら、婦人科領域の検査を一度受けてみるといいでしょう

また、下血や吐血がなくても、胃がんや大腸がんに起因する少量の出血がだらだらと続いて貧血になる場合もあります。こちらは、便潜血検査や上部・下部消化管内視鏡検査の結果と併せてチェックを


コレステロール

コレステロール値は年々上がるので、40代になるとA判定を出すのはなかなか難しいかもしれません。特に更年期に入ると、コレステロール値は如実に上昇します。

数値の変化を見ながら、油や卵のほか、お菓子やアルコールなど糖質の摂取量に着目して、食べる物や食べる量を調整しましょう。


尿検査

女性は男性より膀胱炎になりやすく、疲労やストレスが原因で細菌による感染症を起こすことも多いです。

白血球の値はそうした疾患の疑いを発見しやすくするので、腎機能の低下のサインかもしれない尿蛋白と合わせて毎年チェックをしましょう。

基本項目だけでなく、オプション検査も大切!どれをつければいい?

――さまざまなオプション検査がありますが、これらは40代以降、大切になりますか?

そうですね、必ず受けてほしいオプション検査はありますので、いくつか紹介しておきましょう。


子宮がん、乳がんなど婦人科系検査

子宮がん、乳がんは、2年に1度ほどのペースで検診を実施している自治体が多いので、自治体の検査がない年はオプション検査で受けるといいでしょう。

乳がん検診については、マンモグラフィーか乳腺超音波(エコー)かで迷う方がいらっしゃいますが、両方受けられるならそれに越したことはありません

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骨密度検査

骨密度は、年齢とともに確実に低下します。骨密度の低下が原因で発症する代表的なものが「骨粗しょう症」。骨量と骨密度が低下して骨がスカスカになり、骨折しやすくなる病気です。

骨密度が低下する要因は、ストレスや乱れた生活習慣などさまざまなことが考えられますが、骨は女性ホルモン(エストロゲン)とも密接に関わっているため、エストロゲンの減少によって急激に骨密度が低下することがわかっています。

40代の骨粗しょう症有病率は少ないですが、骨密度は40代から減っていきます。それを放置しておくと、シニアになって骨粗しょう症に至るリスクが高まり、すると骨折で寝たきりになったり、介護が必要になったりする可能性も高まるでしょう。また、骨密度は"見た目年齢"にも大きく影響するんですよ。骨密度の減少によって、顔の土台となる骨が筋肉や皮下脂肪を支えきれなくなり、たるみやシワ、ほうれい線が表れやすくなります

骨のもろさは外からはわからないもの。現在の自分の骨密度がどれくらいかを知っておくことが大切です。

■骨密度と"見た目年齢"の関係についての詳しい話は次の記事へ
「骨粗しょう症」対策は40代から!老け顔の原因は「骨」にアリ?


脳ドック

片頭痛を訴えて受診する人は多いのですが、よく調べてみると脳梗塞など重篤な疾患が隠れていることもあります。毎年受ける必要はありませんが、40歳を過ぎたら一度は検査しておくと安心です。


大腸や胃の内視鏡検査、腹部超音波検査

消化器系は、胃や大腸の内視鏡検査で胃がん、大腸がんのチェックをしましょう。会社の検診などで、胃の検査がバリウムを使うX線検査の場合、胃炎を指摘された際はピロリ菌がいるかどうかをチェックして、いるようなら除菌するとともに、胃の内視鏡検査による経過観察をしてください。

腹部の超音波検査も腎臓がんや膵臓がんの発見に役立ちます。体への負担が少なく、費用もお手頃なので、内視鏡と組み合わせて実施することをおすすめします。

運動だけ、食事制限だけではやせない。両方を生活に取り入れて

――40代に入ると体が大きく変化し始めることもあり、健診結果のチェックはそれまで以上に重要になるんですね。

最近は、在宅勤務が増えて生活習慣が変わり、コレステロール値に異常が出る人が増えた印象です。自宅でお仕事をするようになると、通勤をしないので必然的に運動量が減る上、間食もしやすいことが原因のひとつでしょう。

コレステロール値の上昇をそのままにしておくと肝機能にも影響が出て、脂肪肝を指摘されることもあります。

――脂肪肝という言葉は一般化していて、切迫した疾患であるという意識が薄れている印象があります。

そうですね。こうした肥満傾向を放置すれば、慢性肝炎や肝硬変、さらには肝臓がんなどへと進行しかねません。食事や間食をコントロールするのはもちろんですが、加えて運動習慣を取り入れましょう

年齢を重ねると、運動だけ、食事制限だけではなかなかやせませんから、運動と食事管理を組み合わせ、継続することを心掛けていただきたいですね。


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東京ミッドタウンクリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

古川先生

PROFILE

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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