閉経は悪いことばかりじゃない!女性の「第2の青春」といわれる理由

「女性としての性を喪失する」「不調や疾患のリスクが高まる」といったネガティブイメージがつきまとう「閉経」。自分の体に対する意識が高い人ほど、いずれ来る「その日」に漠然とした不安を感じているのではないでしょうか。

しかし、実は閉経によってもたらされる恩恵は多く、悪いことばかりではありません。閉経後だからこそ自由を謳歌し、たくさんの喜びに満ちた人生を送るための考え方について、浜松町ハマサイトクリニックの医師・吉形玲美先生に聞きました。

閉経は前向きに心と体をマネジメントするきっかけに

――更年期に入って閉経が見えてくると、「体力がなくなって老いる」「女性らしさがなくなる」「病気になりやすくなる」といったマイナスの側面にとらわれて、悩む女性も多いようです。

年齢とともに卵巣の機能が衰え、月経が不規則になって、やがて閉経を迎えるのは自然の流れ。といっても、初潮を迎えてから毎月当たり前のようにやってきていた月経がなくなるのは、女性の人生にとって大きな変化ですよね。

閉経後にさまざまなトラブルが起きやすくなるのは確かですが、月経があることを女性としての価値や女性らしさに結び付けて考えていると、ネガティブなイメージばかりにとらわれて落ち込んでしまうかもしれません。

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――悩みの部分だけを見ていくと、そうなってしまいますよね。

ただ、だからといって閉経が女性にとって悪いことばかりかというとそうではありませんし、閉経すると女性らしさがなくなるわけでもありません

閉経がもたらしてくれるメリットにも目を向けて、前向きに心と体をマネジメントしていくことが大切です。閉経をどう迎えるかによって、その後の人生が変わってくるといっても過言ではないんですよ。

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閉経で得られる恩恵とは?

――閉経のメリットに目を向けると、ポジティブに閉経を迎えられそうですね。具体的には、どんなことが考えられますか?

では、閉経による心身のメリットについて具体的に挙げてみましょう。


月経のわずらわしさから解放される

長くPMS(月経前症候群)に苦しんできた人や、月経痛や過多月経などに悩まされてきた人にとっては、なんといっても月経のわずらわしさから解放されることが一番大きいでしょう。

月経が終わるということは、ホルモンの変化による好不調の波から解放されるということ。PMSが重い人の中には1ヵ月の半分以上を不調の中で過ごす人もいますから、閉経でぐっと楽になると思います。

月経の予定を踏まえて旅行の日程を組む必要がなくなったり、好きなときに好きな服を着て出掛けられるようになったりするでしょう。温泉やスイミングなど、月経があるうちは制限があった水にまつわるアクティビティも、自由に楽しめるようになりますよ。


月経があることによる卵巣や子宮の病気から逃れられる

また、閉経によってリスクが高まる婦人科系疾患がある一方、閉経することで逃れられる卵巣や子宮の病気もあります。

女性ホルモン(エストロゲン)によって大きくなり、過多月経やそれに伴う貧血、重い月経痛(月経困難症)などを引き起こす子宮筋腫、同じくエストロゲンが病気の進行に大きく影響し、月経困難症や、月経時以外の下腹痛、排便痛などの原因になる子宮内膜症などがそうですね。

これらの疾患は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下する閉経を境として、進行する可能性は低くなります。そのため、閉経間近の女性の場合、病状によりますが、手術をせずに対症療法として薬物治療を継続し、そのまま閉経を迎える手法を選択することもあります。私たちはこれを、「閉経逃げ込み療法」などと呼んでいます。

「閉経すること」よりも、閉経後も続く人生に目を向けて

――前向きな要素があって安心しました!では、閉経することで、女性としての価値や女性らしさが失われてしまうのではないか...といった心理にはどう向き合うべきですか。

2017年の秋に参加した学会で、忘れられない講演を聴きました。スペインの女性が閉経をどう迎えているかについてです。

スペインの女性は、閉経を迎える頃から定年期を迎える60代にかけての期間を、「第2の青春」と呼んで心待ちにしているのだそうです。家の中でも外でもずっと忙しく自由の少ない毎日を過ごしてきた女性にとって、子供たちが巣立ったり、仕事が一段落したりするこの頃は、ようやく自分らしくリラックスして過ごせるすばらしい時期なのですね。

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――それまで家族のために尽くしてきた女性が、自分のために生きられるようになるわけですね。

そうなんです。

このとき登壇された方がお話ししてくださった、「70代のお母様がどのように日々を過ごしていらっしゃるか」についての内容がとても素敵だったので、少しご紹介させてください。

彼女は人生の中で、最も楽しい時期を過ごしている。

彼女は、「これ以上の自由はないと感じている。なぜなら今は誰かに気を使ったり、人の喜びのためばかりを考えたりする必要はなく、長いあいだ貯めてきた時間とお金を、自分のための楽しみや幸せに使えるから」と言う。

毎日9時に起床、友人とヨガクラスへ行き、その後友人とテラスで朝食。ある日は早く帰宅し、彼女の好きなおいしくて健康的な食事を用意する。

またある日は、演劇のクラスに行く、カフェで友人と集まり店員さんたちと冗談を言って笑い合う。

そんな彼女を見ていると、日を追うごとにますます素敵な女性になっていると言わずにいられない。

いつもかわいらしく口紅を塗る。

昔は若くて今よりずっとかわいかったと認めていながらも、今はもっと幸せであるということを実感している。間違いなく、その幸せと生きる喜びは増すばかりである。そして、それが彼女をより輝かせる原動力となっている。

※第16回日本更年期と加齢のヘルスケア学会学術集会「女性の生涯に向けての活動とウェルネス」より

――とても心動かされる、素敵なメッセージです。日本の女性も、こんな風に閉経と向き合えるようになったらいいですね。

本当にそうですね。閉経することよりも、閉経後も続いていく長い人生をどう生きるかに目を向けて、その時期なりの美しさに自信を持って過ごしてほしいと思います。

――そのように気持ちを切り替えるためにできることがあれば、ぜひ教えてください。

月経でつらい思いをしてきた経験や、これまで月経があるから我慢してきたことが誰にでもあると思います。閉経でそうしたつらさや制約がなくなったら何ができるか、何をしたいかを考えてみてください。

そして、その内容を具体的に書き出してみましょう。

閉経後のほうがアクティブに、エネルギッシュに、魅力的な人生を送っている女性はたくさんいます。年齢を重ねたからこそ得られる自由を思い切り享受できるように、少しずつ心の準備をしていきましょう。


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ハイメディック東京日本橋コース

SUPERVISERこの記事を監修した人

吉形先生

PROFILE

吉形 玲美 (よしかたれみ) 医師

医学博士/日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
専門分野:婦人科

1997年東京女子医科大学医学部卒業
産婦人科臨床医として医療の最前線に立ち、婦人科腫瘍手術等を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、2010年より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。
2022年7月「40代から始めよう!閉経マネジメント」(講談社刊)を上梓。
2023年9月より「日本更年期と加齢のヘルスケア学会」副理事長に就任。

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