「幸せホルモン」を増やすには?ポジティブに生きるための処方箋(後編)~コロナ禍だからこそ、ワクワクしよう~

長引くコロナ禍により、仕事でもプライベートでも多くの我慢をしいられ、肉体的にも精神的にも疲弊する人が増えています。強いストレスを受けたとき、感情の揺らぎや気持ちの落ち込みを抑え、上昇気流にのるお手伝いをしてくれるのが「幸せホルモン」です。前編では、この幸せホルモンの種類や役割についてご紹介しました。

後編では、3種類の幸せホルモンの働きや増やし方について、せんだい総合健診クリニック院長の石垣洋子先生により詳しく教えていただきます!

前編はこちら

安らぎを与える幸せホルモン「オキシトシン」

オキシトシンは、「幸福感を与える」「ストレスを軽くする」「信頼感を高める」といった働きをするホルモン。「愛情ホルモン」とも呼ばれ、このホルモンの分泌は、ストレス軽減や免疫力アップにもつながります。

オキシトシンは、元々、出産・育児の際に分泌されるホルモンとして知られていました。赤ちゃんが母親の乳首をくわえると、母親の体内のオキシトシンが増え、母乳の分泌が促されます。

このことから、オキシトシンは母子間でのふれ合いから生まれるホルモンと思われていましたが、最近の研究では、母子間以外のスキンシップによっても分泌されることがわかってきました。

オキシトシンの分泌には、PCや携帯電話ではなく、直接顔と顔を合わせて交流したり、気の置けない友人とおしゃべりをしたり、家族やペットとふれ合ったりするなど、心を通わせたという事実と行動がとても大切になります。

オキシトシンを増やすために心掛けたい行動は、次のとおりです。


スキンシップを増やす

オキシトシンの分泌は、手をつなぐ、見つめ合う、ハグをするなどのスキンシップによって促進されます。家族や友人との食事や会話、ペットとのふれ合いなどでも、オキシトシンを効果的に分泌させることができます。

幸せホルモン_2_1-min.jpg

今はコロナ禍であり、直接ふれ合うことはなかなか難しいかもしれませんが、こんなときだからこそ、何気ない一言や優しい声掛けがとても大切なような気がします。いつもならスルーしてしまう出来事も、少し丁寧に対応することによって、オキシトシンの分泌が高まり、周りはもちろん自分も幸せになれるでしょう。

ソーシャルディスタンスはフィジカルディスタンスであって、心のディスタンスではありません。「うれしい」「楽しい」「幸せ」「ありがとう」など、どんどん皆で言葉にしていきましょう。


人に優しくする

オキシトシンは「思いやりホルモン」とも呼ばれており、相手を思いやって何かをしてあげたり、助けたりすることでも分泌が促進されます。プレゼントをもらう側だけでなく、渡す側もワクワクした気持ちになるのは、その行動によって体内のオキシトシンが増加するためかもしれません。相手の顔を思い浮かべながらプレゼントを選ぶ時間も幸せですし、喜んでもらったらさらに幸せが倍増します。

このように、誰かの役に立つことをしたり、誰かの喜ぶ顔を見るために行動したりすると、回りまわって最後は自分も幸せになります。もしかしたらこれこそが、究極の「Happy PDCA(※)サイクル」なのかもしれません。

※Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返すことで、継続的に業務を改善する手法。

ストレスに負けない幸せホルモン「セロトニン」

セロトニンは、心と体に元気を与えてくれる、"特効薬"ともいえるホルモンです。セロトニンがしっかり分泌されていると、交感神経と副交感神経のバランスが整い、自律神経が安定します。気分の浮き沈みが少なくなることで、ストレスやイライラも軽減されるでしょう。

自律神経が安定すると、血色が良くなって目もぱっちりしてきますし、姿勢も良くなり背筋も伸び、顔も引き締まって、年齢に関係なく若々しく輝いて見えます。肌に張りがあり、姿勢が良く、いつも格好良く歩いて見える女性が周りにいるなら、それはセロトニンがしっかり分泌されている証です。

セロトニンを増やすために心掛けたい行動は、次のとおりです。


太陽の光を浴びる

セロトニンを増やすのに最も大切なのは太陽の光です。太陽の光が網膜を刺激して、セロトニンの生成を活性化してくれます。朝起きたときにカーテンを開けて、朝陽を浴びるのが大切といわれるのはこのためです。

太陽の光を浴びるためにも、1日15分から30分は、散歩や買い物がてら家から出ましょう。テレワークだからといって、家の中に引きこもったまま過ごすのは要注意。1日中部屋着で座りっぱなしの生活をしていると、心身のオンオフが切り替えられなくなり、セロトニンの分泌量が減少していきます。

テレワークによって、1日の平均歩数が8割減少したという報告もあります。運動不足は、心身の不調や生産性の低下など、パフォーマンスに影響を与えるともいわれていますから、1日1回、15分から30分を目安に、外の空気を吸いに家から出ることを心掛けましょう。


大豆製品、乳製品、バナナを毎日食べる

セロトニンの原料となる「トリプトファン」は、必須アミノ酸の一種ですが、体内では生成されません。セロトニンを増やすためにも、トリプトファンを含む食品を積極的に食べるようにしましょう。

おすすめの食品は、大豆製品(納豆、豆腐、味噌など)や乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど)、バナナなど。特にバナナには、トリプトファンのほか、セロトニン造成に必要な炭水化物、ビタミンB6がバランスよく含まれています。私も、納豆、味噌汁、バナナ入りヨーグルトを毎日食べて、セロトニンを増やすよう努めています。

幸せホルモン_2_2-min.jpg

ちなみに、大豆のパワーを十分に得るには、摂取した大豆イソフラボンを、腸内でエクオールという成分に変換する必要があります。しかし、エクオールをみずから産生できるのは、日本人の3人に1人といわれています。エクオールを産生できない方は、エクオール含有のサプリメントを服用するのがおすすめです。

エクオール-min.jpg

更年期症状や生活習慣病、肌の老化対策として注目されているエクオール。エクオールを産生できない人は、エクオール含有サプリメントを毎日10mgとることで不調をやわらげ、心身ともに前向きな日常を送りましょう。

<こちらもCHECK>
「エクオール」の働きや効果とは?体内で産生できない場合の対処法も
更年期症状だけじゃない!エクオール含有サプリメントがもたらすさらなる効果

やる気が出る幸せホルモン「ドーパミン」

人が生きていくためには、目的達成や危機回避のための「やる気」スイッチが必要。ドーパミンは、生きるために必要なやる気を促し、幸福感をアップさせるホルモンです。

また、仕事や学習などに必要な情報を記憶し、処理する能力である「ワーキングメモリー」にも影響を与えますので、ドーパミンの分泌が活性化されると、学習能力や仕事能率がアップし、達成感、快感、喜びなどを得やすくなります。

ドーパミンを増やすために心掛けたい行動は、次のとおりです。


日常的に小さな目標やタスクを達成する

ドーパミンの分泌は、小さな目標やタスクを達成することで活性化されます。大きな目標ではなく、達成しやすい小さな目標やタスクを設定することで、継続的にドーパミンを分泌させることが重要です。

最初から目標を大きく設定してしまうと、達成するのに多大な時間と努力が必要となり、長くモチベーションを保つのにエネルギーが必要となって、燃え尽き症候群に陥る可能性もあります。大きな目標を達成したいときには、細分化して小さな目標を設定し、それを重ねることによって、日常的に達成感を得られるよう工夫しましょう。


目標を達成するたびに、自分にご褒美をあげる

ドーパミンを活性化するには、「ご褒美」を設定するのも効果的です。「この仕事を終えたら、チョコレートを食べよう」「この目標を達成したらあの洋服を買おう」など、小さな目標やタスクを達成するたびに、自分にご褒美をあげることがドーパミンの活性化につながります。

人の集中力には「15分・45分・90分の法則」があり、深く集中できる時間は15分、集中力を保てるのは45分、集中力の限界は90分といわれています。1日のタイムスケジュールをこの時間軸に合わせ、メリハリをつけて、上手にブレイクタイムを作ってみてください。

腸内環境を整える

幸せホルモンは、腸の働きとも大きな関わりがあります。特にセロトニンは、「第二の脳」とも呼ばれている腸の働きに影響を受ける幸せホルモンです。

セロトニンの約90%は腸内で生成されています。そのため、セロトニンを増やすには、腸内環境を整えることがとても大切なのです。

<こちらもCHECK>
「健康"腸"寿」――知られざる腸内細菌の力を知ろう(前編)
「健康"腸"寿」――知られざる腸内細菌の力を知ろう(後編)

幸せホルモン_2_3-min.jpg

日常生活のちょっとした心掛けが幸せホルモンを増やすカギ

もし今、「ストレスでイライラしがち」「楽しいと感じることがない」「やる気が起きない」といった気持ちに悩んでいるなら、幸せホルモンが不足している可能性があります。

人間の体はうまくできていて、人間の脳が持つ力は、どれだけ時代が変化しても変わりません。朝起きて太陽の光を浴びたり、食べたり、歩いたり、人とふれ合ったり...そんな風に、人間が昔から当たり前にやってきたことが、幸せホルモンの分泌を促してきました。

太陽の光を浴びる習慣を作る、外に出て誰かとつながってみる、人に優しくしてみるなど、日常生活のちょっとした心掛けが幸せホルモンの分泌を促し、気持ちが上向きになる気がします。誰かの役に立って、人が喜ぶ姿を見て、自分も幸せになる。そんなHappy PDCAサイクルを回して、みんなでいっしょに幸せになれたらいいなあ...と思っています。

今はエアハイタッチですが、1日も早く、リアルハイタッチを皆でしたいですね。コロナ禍だからこそ、人とのつながりやふれ合い、何気ない言葉が、自分を癒やしてくれていたことに気付けるでしょう。

「新型コロナウイルスは、もう一度丁寧に生き直すチャンスを私たちに与えてくれた」と、私は前向きに捉えています。まだまだ収束の見通しが立たない日々が続いていますが、きっといつか平穏な日常が戻ってくることを信じて...。今日も笑顔でHappy PDCAサイクルを回しましょう♫


ヨウコ先生の診察を受けられる施設はこちら
せんだい総合健診クリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

石垣先生

PROFILE

石垣 洋子 (いしがき ようこ) 医師

専門分野:内科

1981年聖マリアンナ医科大学医学部卒業
医療法人社団進興会エスエスサーティクリニック、ソフィア健診クリニック院長を経て、2010年よりせんだい総合健診クリニック院長に就任。がん治療の最前線で治療を続ける中で症状が出てからでは遅い!という悔しい思いから予防医療に力を入れる。 「予防は治療に勝る!」の理念の元、食事、運動といった生活習慣の改善や、健康指導を得意とする。

石垣先生のメッセージはこちら

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
ヨウコ先生の健康管理は私にまかせて
この記事をシェアする

この記事は、働く女性の医療メディア
ILACY(アイラシイ)の提供です。

“おすすめ記事recommended

CATEGORYカテゴリー