更年期は何歳から始まる?つらい症状を抑える対処法について

更年期の症状は、一般的に、45~55歳頃に現れるといわれています。しかし実際は、30代後半から更年期の症状が出始める人もいれば、50代になってからの人もいるなど、その時期は人によって異なります。また、症状の出方にも個人差があり、外出できないほどぐったりしてしまう人もいれば、閉経後に振り返って「もしかしてあれが更年期だったのかな?」と思う程度で済む人も。

いつ、どのように始まるかわからないことに加えて「更年期=老いの始まり」というイメージが強いため、更年期に対して漠然とした不安を覚えている人も多いでしょう。ここでは、「更年期は何歳から始まるの?」「つらい症状への対処法はあるの?」といった不安を持つ人に向けて、更年期の基礎知識をご紹介します。

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[2021年10月8日更新]

更年期に体の中でどんなことが起こる?

更年期とは、加齢によって卵巣の機能が低下し、女性ホルモンの分泌量が減少して、閉経を迎える準備を整える時期のこと。日本人女性の閉経の平均年齢が50.5歳であり、一般的にはその前後の10年間(45~55歳)が更年期といわれています。

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日本産婦人科学会「本邦女性の閉経年齢(1995)」を参考に作成

多くの人の場合、更年期になると月経に変化が現れます。平均して3年くらいのあいだ月経周期が飛んだり、反対にダラダラ長引いたりするなど、月経不順の期間が続くでしょう。やがて月経が来なくなり、月経のない状態が12ヵ月以上続けば閉経です。

では、更年期はどのように始まるのでしょうか。個人差はありますが、更年期が始まると、下記のようなサインが見られます。


月経周期の乱れ

月経周期の乱れは、更年期の始まりを示すサインのひとつ。卵巣機能が低下すると、女性ホルモンの「エストロゲン」の分泌量が減ります。その分泌を促す性腺刺激ホルモンが卵巣を刺激して排卵を促したり、卵巣機能の低下から排卵が起こらず黄体期が短くなったりするため、生理周期も短くなるのです。

その後、今度は月経周期が長くなったり、短くなったりするようになり、やがて間隔が大きく開いて閉経を迎えます。


自律神経の乱れ

女性ホルモンの分泌が減ると、脳は分泌量を増やすよう卵巣に指示を出します。しかし、機能が低下した卵巣は、十分な女性ホルモンを分泌することができません。

それによって脳は混乱し、脳が司る自律神経にも影響が出て、心身の不調につながるのです。


体の不調

女性ホルモンの影響は、体のさまざまな部位に及びます。そのため、女性ホルモンが減少すると、骨や心臓、血管、泌尿器、生殖器、皮膚、脳、脂質代謝などに変化が現れ、場合によっては日常生活に支障をきたすようなつらい症状を引き起こすのです。

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ライフステージに伴う女性ホルモンの変化

女性の一生は、卵巣から分泌される女性ホルモンの影響を大きく受けており、その分泌量の変化によって、心身にさまざまな症状が現れます。続いては、ライフステージごとに、その変化を見ていきましょう。

女性のライフステージは、大きく「思春期」「性成熟期」「更年期」「更年期以降」に分けることができます。


思春期(10~18歳頃)

初潮の平均年齢は12歳前後。妊娠・出産の準備ができる状態まで発育が進むと、卵巣から女性ホルモンが分泌されるようになります。


性成熟期(18~45歳頃)

10代後半になり性成熟期を迎えると、女性ホルモンの分泌量が安定し、妊娠・出産の準備が整います。女性ホルモンの分泌量は、20代後半にピークに達し、35歳頃から徐々に減少していきます。


更年期(45~55歳頃)

更年期に入ると、女性ホルモンの分泌量が急激に減少します。個人差はありますが、ほてり、冷え、イライラ、落ち込み、動悸、めまいなどの更年期症状が起こるほか、月経周期にも変化が現れ、閉経に向かっていきます


更年期以降(55歳頃~)

更年期が終わると、心身ともに落ち着きを取り戻します。その一方で、女性ホルモンの分泌量がわずかになり、そのサポートがなくなることで、生活習慣病にもかかりやすくなります

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女性ホルモンは男性ホルモンに比べて急激に減少する

更年期に起こりやすい症状とは?

卵巣機能が低下すると、女性ホルモンの分泌を指令する脳との連携がうまくいかなくなります。女性ホルモンが減っていることを察知した脳の視床下部からの指令によって、脳の下垂体は性腺刺激ホルモンを過剰に分泌し、女性ホルモンをもっと分泌するよう指令を出し続けます。

しかし、実はこれこそが更年期の症状を引き起こす要因。なぜなら、脳には自律神経をコントロールする場所があり、そこが影響を受けてしまうからです。

自律神経は全身に関与するため、更年期の症状も多岐にわたります。ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)や多汗、めまい、動悸、息切れ、気分の落ち込み、イライラ、頭痛、肩こり、不眠、冷え、疲労感のほか、手足のしびれやこわばりなどは、更年期特有の症状といえるでしょう。

更年期に起こりがちな症状についてまとめました。

■更年期に起こりがちな症状

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女性ホルモンは更年期にどう働く?

女性ホルモンは、肌や髪を美しく保ったり、代謝を助けたり、骨や関節の健康を守ったり、血管や脳神経の老化を防いだりなど、私たちの体の中でたくさんの働きをしています。

そのため、女性ホルモンの分泌が減る更年期以降は、肌や髪の老化が進み、内臓脂肪がつきやすくなるといわれています。

閉経を迎えると、女性ホルモンの分泌量はゼロに近くなってしまうため、粘膜の乾燥や尿漏れが起きたり、骨粗しょう症や認知症になったりするリスクも高まります。だからこそ、更年期の体の変化を見逃さず、健康管理をしていくことが大切であるといえるでしょう。

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更年期障害の3つの治療法

更年期障害は症状が多岐にわたるため、原因がわからずに、さまざまな診療科を受診して改善が遅れることもあります。更年期のサインに気付いたら、まずは婦人科を受診して相談しましょう。

おもな更年期障害の治療法としては、下記の3つが挙げられます。


ホルモン補充療法(HRT)

ホルモン補充療法(HRT)は、分泌量が減る女性ホルモンを、飲み薬や貼り薬、塗り薬などで直接的に補う治療法です。女性ホルモンの低下に伴って起こる、幅広い症状の改善に役立ちます。

特に、ホットフラッシュや動悸など、代表的な更年期の症状は、治療開始から比較的早く改善される可能性があります。


漢方薬や抗うつ剤、睡眠薬などを用いた治療

漢方薬は、自身の症状や体質に合わせて処方され、HRTと併用されることもあります。不眠やイライラ、不安感などが特に強い場合は、抗うつ剤や精神安定剤、睡眠薬などで症状の緩和を図ります。


サプリメントでエクオールを摂取

大豆イソフラボンを摂取したとき、腸内細菌の力で作られるエクオールという成分には、更年期の症状を緩和する作用があることがわかっています。

体内でエクオールを作ることができるのは、日本人の約3人に1人。体内でエクオールを生産できない場合は、直接エクオールを取り入れることができるサプリメントを摂取するのがおすすめです。エクオールによって、女性ホルモンに似た働きをする成分を補うことができ、悩ましい症状の緩和が期待できます。

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「更年期の症状かな?」と思ったら、婦人科に相談を

いつ、どんな症状が起こるかわからない更年期。月経不順が続いたり、心身の不調を感じたりするようになったら、我慢せずに婦人科へ行きましょう。

時期や症状に個人差はありますが、更年期はいずれ誰もが迎えるもの。更年期の症状の程度は、ストレスや性格など、精神的な部分に左右されることがわかっています。更年期を迎えたら、ライフステージの転換期だと考え、できるだけ前向きに向き合いましょう。

監修者・更年期トータルケアインストラクターの永田京子さんより

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得体の知れないものは誰だってこわいものです。更年期の渦中にいると「もう不調から抜け出せないのでは?」と不安になりますが、体の仕組みや「更年期には必ず終わりがある」と知っているだけでも、心の余裕が変わってきますよ。

いざというときは婦人科など専門家のサポートもあります。 "更年期 正しく知れば こわくない"。正しい知識を持って、心と体と向き合い、人生を楽しむ土台を作っていきましょう!


この記事を監修した人
永田京子(ながた・きょうこ)さん

兵庫県出身、愛知県小牧市在住。2児の母。東映アカデミーに所属し、役者として舞台やドラマなどで活躍した後、ピラティスや整体、経絡、アロマ、リフレクソロジーなどを学び、ピラティス指導者、産後ケアのインストラクターとしての活動を開始。受講者の声と、更年期障害が悪化して苦しむ母を見ていた経験から、女性ホルモン・更年期の正しい情報と対策を伝えるNPO法人「ちぇぶら」を創設した。「ちぇぶら」は更年期を英語でいう「the change of life」の意。著書に「女40代の体にミラクルが起こる!ちぇぶら体操」(三笠書房)、「はじめまして更年期」(青春出版社)がある。


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