スリムな人の腸内にある「やせ菌」とは?増やすための生活習慣

たいして食べていないのに太る、やせにくくて太りやすい――女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減っていく更年期以降の女性にはそんな悩みを抱える人が多い一方で、しっかり食べていても健康的に引き締まった体形を維持している人がいます。いったい、この違いはどこにあるのでしょうか。

東京ミッドタウンクリニックの消化器内科医師・古川真依子先生は、「腸内細菌のバランスが悪く、やせ菌が少ないことが理由のひとつかもしれません」と指摘します。やせている人の腸内には、やせ菌が多く存在し、やせやすい体質を作っているのだそう。

そこで、やせやすい体を作るのに大切な「やせ菌」とは何か、やせ菌を増やすためにどうすればいいかについて、古川先生に教えていただきました。

やせ菌は、体をやせやすい体質に導く

――まずは、やせ菌とはどういうものかについて教えてください。

以前の記事で、腸内細菌には「デブ菌」と「やせ菌」がいることをお話ししました。太ったり、やせたりといった体形の変化には、腸内に生息しているこの2つの菌が大きく関わっています。

専門用語でいうと、デブ菌は脂肪を溜め込む「フィルミクテス」、やせ菌は脂肪を燃焼する「バクテロイデス」。腸内にフィルミクテスが多い人は太りやすく、バクテロイデスが多い人はやせやすくなります

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――デブ菌とやせ菌の割合は、何によって変わるのですか?

腸内細菌がどのように構成されているか、おさらいしておきましょう。腸内細菌には、「善玉菌」と「悪玉菌」、そして「日和見菌」の3つがあります。


善玉菌

ビフィズス菌や乳酸桿菌などが善玉菌にあたります。消化吸収を助け、免疫力を高めるほか、老化防止にも役立ちます。人の体に良い影響を与える菌だと覚えておきましょう。


悪玉菌

悪玉菌は、大腸菌、ウェルシュ菌、ブドウ球菌などです。悪玉菌といっても体に不可欠な働きもしているため、多すぎず少なすぎず、バランス良く存在している分には問題ありません。

しかし、何らかの理由で悪玉菌が大量に増えると、肥満、糖尿病、大腸がん、動脈硬化症など、深刻な病気につながる可能性があります。


日和見菌

日和見菌には、連鎖球菌、ユーバクテリウムなどがあります。腸内環境が悪化して悪玉菌が優勢になると悪玉菌に加勢し、健康なときは善玉菌に加勢します。

フィルミクテスとバクテロイデスはどちらも日和見菌ですが、フィルミクテスは悪玉菌が優勢なときに加勢し、バクテロイデスは善玉菌が優勢なときに加勢します。そのため、腸内環境の良し悪しによって、デブ菌とやせ菌、優勢になる菌が変わってくるのです。

■太りやすい人、やせやすい人の腸内環境

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――やせ菌は、どんな働きをしてくれるのですか?

やせるのを助けるやせ菌の働きとして、
・脂肪燃焼を助ける「短鎖脂肪酸」を作る
・腸管を作るエネルギーになる
・脂肪が栄養分を取り込まないようにする
・脳に働きかけて食欲を抑える

といったものがあります。

やせ菌にプラスに作用する水溶性食物繊維と難消化性デンプン

――やせ菌を増やすには、どうすればいいのでしょう。

脂肪の燃焼を促し、悪玉菌の増加も防いでくれる「短鎖脂肪酸」に注目しましょう。

短鎖脂肪酸は、お酢を作るのに必要な酢酸や、腸内を弱酸性に保つ酪酸のこと。その一部は、腸壁から体の中に入って、代謝をアップさせる自律神経の交感神経を刺激します。

さらに、食欲を抑える消化管ホルモン「インクレチン」の分泌も促してくれます。インクレチンは、胃の運動を抑えて満腹感を出してくれるので、おなかがすきにくくなって肥満の予防につながる重要なホルモンなんです。

――短鎖脂肪酸は、食べ物からとることはできますか?

短鎖脂肪酸を食べ物から直接とるのは難しいので、元々いる腸内細菌に短鎖脂肪酸を作ってもらいましょう。

最も有効なのは、水溶性食物繊維をとること。水溶性食物繊維はやせ菌の好物なので、これをエサにして短鎖脂肪酸を作り出します

水溶性食物繊維を含んだ代表的な食べ物は、
・野菜類(キャベツ、ごぼう、オクラ、モロヘイヤなど)
・キノコ類
・海藻類(昆布、ワカメ、ヒジキなど)
・果物類(アボカド、キウイなど)
・豆類
・もち麦
・大麦

などですね。

食物繊維が豊富なもち麦は、白米に混ぜて炊くとぐっと食べやすくなるので試してみてください。

――水溶性食物繊維は、すぐに食事に取り入れられそうですね。ほかに、やせ菌を活発化させる方法があれば教えてください。

水溶性食物繊維と同じく、やせ菌のエサになるのが難消化性デンプンです。その名のとおり、消化されにくいデンプンのことで、便のカサを増やして便通を良くしてくれたり、中性脂肪の上昇をゆるやかにしてくれたりする効果があります。

消化されにくい特性を活かして、腸の奥にいる細菌まで届くのが特徴ですね。

難消化性デンプンは、
・米
・大麦
・オートミール
・芋
・いんげん
・シリアル、グラノーラ

といった食材からとることができますよ。

――やせ菌を優勢にするために、善玉菌と日和見菌を増やすのも大切ですね。

そうですね。善玉菌と、日和見菌を増やすには、
・納豆
・ヨーグルト
・キムチ
・ぬか漬け

といった発酵食品のほか、味噌、醤油、酢などの発酵調味料がおすすめです。

発酵食品をとる際には、プレバイオティクスと呼ばれる、腸内細菌のエサになる食品を同時にとるとより効果が上がります。食物繊維やオリゴ糖を含む、ブロッコリー、海藻類、イモ類などを、発酵食品といっしょに食べるようにしてください。

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食事、運動、メンタルケアですこやかな腸を目指そう

――やせ菌を増やすには、食生活が重要なんですね!

低脂肪・低糖質で、高たんぱくな食事を心掛けると、自然とやせ菌が増えていくはずです。

食事に含まれる脂を気にする方がいますが、適度な脂は便通改善につながるので、すべてカットする必要はありません。使用する油を、小腸の働きを活発にする「ひまし油(※)」などに替えると、より毒素を排出する効果が高まりますよ。

また、人によっては、小麦に含まれるグルテンが腸内環境を悪化させることも。パンや麺などを食べた後に体の不調を感じることがあるようなら、小麦類を控えて、主食を米やもち麦、雑穀米などに置き換えるようにすると、やせ体質に近づけると思います。

※ひまし油...アフリカ原産の植物「ひま」の種子をしぼって得られる油。

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――最後に、食事と併せて気を付けるべき点があれば教えてください。

いつもお話ししていることですが、良い腸内環境を維持するには、バランスのとれた食事と適度な運動、そしてストレスを溜め込まないことがとても大切です。

規則正しい生活を続けて、やせやすいだけでなく健康な体を目指しましょう。

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SUPERVISERこの記事を監修した人

古川先生

PROFILE

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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